• 横浜市港北区の司法書士

    遺言書の作成方法はいくつかあり、それぞれ民法や判例で厳格な方式が定められています。一般的には、遺言者の自筆によって作成する「自筆証書遺言」と、遺言の趣旨に沿って公証人が作成する「公正証書遺言」が多いと思います。

    それぞれにメリット・デメリットがありますが、当事務所では、のちの紛争防止や円滑な遺産承継のために、多少費用がかかるとしても公正証書遺言をお勧めする場合が多いです。

    先日も、遺言の作成を検討されている方のご親族から相談があり、その方は意識ははっきりしているもののご病気で字が書けなかったため、公証人が作成してくれる公正証書遺言の手続をご案内しました。

    しかしご相談があってから数日後、ご親族の方から、そう長くはないかもしれないと医師から言われた、と再度ご連絡がありました。公正証書遺言の場合、戸籍謄本などの必要な書類も多く、本籍地が遠方にあると戸籍の取得だけで時間がかかります。また、公証人は遺言者の自宅まで出張してくれますが、予約できる日程が数週間先の場合も多く、公正証書遺言の作成までに一定の時間を要するので、難しい可能性が出てきました。

    そこで、ご親族から連絡をもらったのが金曜日だったのですが、即日遺言者の方と面談することにし、遺言書作成の意思を確認し、翌週の月曜日に「危急時遺言」を作成することになりました。

    危急時遺言とは、死亡の危急に迫った者の遺言として、これも民法で方式が定められています。

    ①証人3人以上の立会い 

    ②遺言者が証人の一人に遺言の趣旨を口授し、その証人が口授を筆記 

    ③筆記内容を遺言者と他の証人に閲覧又は読み聞かせ 

    ④各証人が内容が正確なことを承認し署名押印

    ⑤遺言作成日から20日以内に、家庭裁判所に確認の審判の申立て

    この方法であれば、遺言者は字が書けなくても遺言が作成できますが、まず前提として「疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者」しか利用できないことになっています。また、この方法による場合、普通の遺言の方式によって遺言をすることができるようになった時から6か月間生存すると、効力がなくなってしまう点も注意が必要です。

    話を戻しますが、金曜日に遺言者と面談し、事務所に戻ってからその内容をパソコンで事前に作成して印刷し、証人3人(私以外の2人)を手配しました。月曜日に再度遺言者の方の自宅へ行き、証人立会のもと遺言者の意思を確認し、作成してあった遺言書を読み聞かせ、慌ただしくも何とか遺言を作成することができました。ちなみに、作成日当日の会話は、念のためすべて録音しておきました。

    その後、遺言作成から9日後に遺言者の方はご逝去されてしまいましたので、危急時遺言を作成しておいて正解でした。危急時遺言の作成後は、別途公正証書遺言の作成も進めていましたが、これは中断し、危急時遺言の確認の審判の申立てを証人の一人として行い、約1ヶ月半後に確認の審判が下りて、録音データを使うこともなく無事に完了しました。なお、証人に対しては事情のお伺いの書面が家庭裁判所から届いたので、それに対しての回答も必要でした。場合によっては家庭裁判所へ出頭することもあるようです。

    審判の確定後には確定証明書を請求し、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所による検認手続き行う必要があるので、結局遺言書が使えるようになるまで約3か月かかりました。

    このように緊急な遺言書の作成にもできる限り迅速に対応いたしますので、遺言書の作成をご検討の方は、ぜひご相談ください。

    (写真は自宅にいたヤモリ)


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