「不動産の名義が間違っているので直して欲しい」というご相談はたまにあります。先日もホームページからお電話を頂き、相談に来てもらうことになりました。
だいたいの司法書士は、「錯誤による更正・抹消登記か、真正な登記名義の回復による移転か」と考えるのではないでしょうか。私もそのつもりで下調べをして、相談を受けました。
状況としては、A名義の不動産が売買によりB名義へと移転してたところ、売買契約をしたのは確かにBだが、資金を出したのはCであり、かつ元々Cが住むための不動産であってBは体が不自由なCのために手続きをしただけだ、という内容でした。
登記名義だけの問題ではなく、このままでは登記上の所有者のBは、Cから資金を出してもらって不動産を取得した(つまり資金の贈与を受けている)と見られ、贈与税が課税される可能性もあるので、C名義に登記簿を修正しなければなりません。
一度錯誤でB名義の登記を抹消をしてから再度AからC名義へと所有権移転登記をするには、A(本当の事例は複数人)の協力を得るのが難しいだろうから、直接BからCへの真正な登記名義の回復による移転かなぁと考えていました。しかし売買契約書上もBが買主でありB自身で登記の手続きしたのだから、現在のB名義が誤っているかといえばそうでもなく、どうしたものかとなと…と悩みました。悩みに悩んで色々調べていたところ、今回の事例にピッタリな方法を見つけました。
結論としては、「民法第646条第2項による移転」の登記を申請し、無事にC名義の登記に移すことができました。
「民法第646条第2項による移転」の登記は普段目にするような登記ではなく(詳細は割愛しますが気になる方は民法646条2項と検索してみてください!)、私は今回初めて申請しました。十年以上前に司法書士の受験勉強で目にした以来で、しかも模試でも出題されないようないわゆる超マイナーな部類の登記だと思います。
登記の名義を変えるだけ、と言えば簡単そうに聞こえますが、それには相続だとか売買だとか、法律上の権利変動がなければならず、かつそれを法務局に証明するため書面を収集または作成しなければなりません。当然、書面を偽造変造捏造することは刑法犯にもなりますので、そういうことは絶対に出来ません。いかに事実関係を法律上の権利変動として構成して、登記申請を通すかということに、司法書士は頭を悩ませているわけです。
相談者にとっては簡単だろうと思える案件も、法律的に見ると実は難しい事情があったり、逆に法律上の権利関係はシンプルでも、その証明が難しかったりと、本当に案件によって様々です。
電話での相談だけだと見えてこない事情や聞き逃してしまう事実もありますので、相談の際はなるべく対面でお話を伺うようにしております。事務所にお越し頂くことが難しい方は、出張も可能ですのでお気軽にご相談ください!